みなさま
いつもグリーンピースのメールを読んでくださり、どうもありがとうございます。
グリーンピースの高田です。
6月末に私から配信したメール「異常気象とクルマ」は、11万人以上の方にお届けし、800件を超える反響が寄せられました。
「いいね」「びみょう」ボタンに反応くださった方、ご返信くださった方、どうもありがとうございました!いただいたコメントはすべて拝読しました。
今回のお便りでは、前回特に大きな反響があった「国内最大手の自動車会社3社が世界中で排出する温室効果ガスは、日本全体の排出量に匹敵」という点について、もう少し詳しく解説したいと思います。
メールの最後には私たちが企画した「意見交換会」や新しくはじめたブログシリーズのご案内もあるので、ぜひご覧くださいね。
「自動車会社が世界で排出する温室効果ガス」といっても、その排出量にはどんなものを含むのでしょうか。
自動車会社の排出というと、工場やオフィスからの排出を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも現在の国際基準では、素材や部品の調達、販売後に購入者が運転して排出するガス、さらには廃棄まで、クルマの一生にわたる排出すべてが対象です。それだけでなく、社員の通勤や出張など、企業活動をする上でのあらゆる排出が対象になります。
この国際基準は「GHGプロトコル」と呼ばれ、世界中の企業や自治体で広く使われています。(資源エネルギー庁の説明がわかりやすいと感じたので、ぜひご覧ください。)
(環境省のサプライチェーン排出量資料に基づき作成)
この基準では、排出の種類を「スコープ1・2・3」の3つに分けて整理しています(上図参照)。この中で今注目が集まっているのが「スコープ3」です。
なぜなら多くの企業にとって、実際の排出の大部分を占めているのが、この「スコープ3」であるケースが多いからです。
スコープ3には、原材料の調達などサプライチェーンからの排出などが含まれますが、自動車会社の場合は「販売したクルマの使用に伴う排気ガス」がここに含まれます。
ガソリン車が一生のうちに出す排出の7~8割は、「使用・走行段階」が占めるので、自動車メーカーの大部分の排出は「スコープ3」にあたるのです。だからこそ、企業の気候変動対策として、スコープ3にどう向き合うかが、今、大きな焦点となっています。
(グリーンピース・ジャパン『自動車環境ガイド2023』より)
では、すべてのクルマが使用時の温室効果ガス排出がない電気自動車(EV)に替わるといいでしょうか。
その答えは、YESでもあり、NOでもあると思っています。
たしかに電気自動車が、地域や自然と調和する形で発電された再生可能エネルギーによる電力を使うのであれば、温室効果ガス削減の観点では有効な選択肢になり得ます。
しかし、グリーンピースの視点は、単に温室効果ガスの排出量を下げることだけに限りません。
クルマを製造するためには、鉄鋼、希少鉱物などを含む多くの資源が必要です。その過程は、しばしば環境破壊や人権侵害と繋がっています。
気候危機への対応は急務ですが、そのための方法は、環境、社会、人権、コミュニティなどをより良くするものでなくてはなりません。
グリーンピースは50年以上にわたり、生態系豊かで、多様な命が育まれる平和な地球を目指して活動してきました。「多様な命」には、今を生きる私たちだけでなく、未来の世代や、地球に暮らす動植物、すべての命が含まれています。
2023年、世界では9000万台以上※1のクルマが生産されました(そのうち日本メーカーの割合は約28%※2)。一方で、クルマの平均使用時間は1日平均たったの30分程度と言われています※3。残りの23時間30分は駐車状態にあるのです。
ということは、私たちの移動のニーズを満たすために、毎年何千万台ものクルマを新しく作る必要性があるのか、見直す余地があるのではないのでしょうか。
グリーンピースが重要だと考えているのは、誰もが必要なときに安全・快適に移動ができる、環境・社会に適した仕組みの向上です。クルマが増えることを前提とするのではなく、適正な台数のクルマが、地域や自然と調和する形で発電された再生可能エネルギー電力を動力とし、利用者のニーズに柔軟に寄り添って利用できるようになる、私たちはそんな社会を望んでいます。
今回も最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。
次回以降は「電気自動車とエネルギーの問題」「
今回も「いいね」「びみょう」ボタンでのご感想をお寄せいただけましたら嬉しいです。
前回、自動車産業など現場で働く方々から寄せられた貴重なご意見は、私たちにとって大きな示唆となりました。そうした声を今後のキャンペーンに活かしたいと考え、自動車や交通分野に関わる方々との意見交換会を企画しました。
自動車業界の脱炭素化について、ぜひ一緒に考えてみませんか?ご参加をお待ちしています。
私たちの考えをより詳しくご紹介するキャンペーンブログを立ち上げました。自動車業界と気候変動について、時事のニュースなどを織り込みながらご紹介していく予定です。こちらもぜひお読みいただけると嬉しいです。
東京では本格的な暑さが続いています。みな様も、どうぞ涼を取りつつ、お元気でお過ごしくださいね。
次回配信は8月下旬を予定しています。
グリーンピース・ジャパン プロジェクトマネジャー
高田久代
*1 一般社団法人日本自動車工業会「世界生産・販売・保有・普及率・輸出」
*2 MARKLINES「2023年 日系メーカー世界生産台数(メーカー発表値)」
*3 EY 新日本有限責任監査法人「情報センサー 2017年5月号 マーケットインテリジェンス」
[配信元] 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。 |
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