みなさま
いつもグリーンピースのメールを読んでくださり、どうもありがとうございます。グリーンピースの高田です。
前回号にもロゴやキャンペーンメッセージに共感の声をいくつもいただき、ありがとうございました。今回は冒頭にDrive Changeキャンペーンのロゴをあしらってみました。
さて今回は「徒歩・自転車・公共交通機関での移動が難しい状況をどう考えたらいいか」というテーマを取り上げます。「郊外でクルマ無しの生活は難しい」「地方の移動の問題を、クルマ無しでどう解決するか」というご意見を数々いただきました。とても大切な問題ですよね。
グリーンピースが重要だと考えているのは、どんな場所に住んでいても、運転免許の有無・所得・健康状態・年齢・子育て中・天候などどんな状況であっても、誰もが必要なときに、安全・快適に移動ができる、環境・社会に適した仕組みを整えることです。
でも今の状況はどうでしょうか。
運転免許を持ち、自信を持って運転ができ、自分が使えるクルマがあり、その必要経費を賄える人と、免許を取ることが難しい人、クルマを購入できない人、運転に不安がある人、こういった人々にとっての移動のしやすさや、移動の安全性・快適性が同じように保証されているとは言えません。
免許を取ることが難しい、と聞くと、高齢者や障害のある方を思い浮かべますが、18歳以下の子供たちもそこに含まれます。また、免許を持っていても運転に本人や家族が不安を持つ人、あえて車を使わない選択をしている人などもいると思います。
戦後、日本のほとんどのまちがクルマでの移動を前提に作られたために、道路という公共空間は車道が中心になっています。歩道・自転車用の道路は整備がされていないこともあり、通行するのが怖いと感じる方もいるかもしれません。
私は子供がまだ小さいので、一緒に出かけるときは、「後ろからクルマ来るよ」「危ないよ、気をつけて」「白い線の中で一列だよ!」などと、遊びに夢中な子どもたちに何度言うかわかりません。一方、運転する方も、安全運転に気を配りながらの移動時間なのではないでしょうか。
このように考えると、現在の移動の仕組みでは、その安全性や快適性における不均衡が生じていることに気が付きます。
こうした不均衡をなくすために、世界では自動車中心だったまちを歩行者・自転車中心にする「カーフリーシティ」へと、再設計するなどの取り組みが広がっています。
国内外の自転車政策について発信している宮田浩介さん編著の『世界に学ぶ自転車都市のつくりかた 人と暮らしが中心のまちとみちのデザイン』には、そうしたまちづくりの事例がとても具体的に紹介されていて、多くの示唆をもらいました。
興味深い事例の一つがスペイン・バルセロナの「スーパーブロック」計画です。バルセロナでは、自家用車利用率が20%と低かったにも関わらず、公共空間の60%以上が自動車用途でした。そこで思い切って、車道の一部を歩行者優先道路へ転換するという大胆な計画を実行しました※1。
すると自動車の交通量は減り、市内の大気汚染が大幅に改善されました。それだけでなく、地域住民の交流やコミュニティも促進され、住民の健康度や幸福感が増幅するなど様々な効果がうまれたそうです※2。
ほかにも、ヨーロッパでは、公共交通と徒歩や自転車が「一番早く、安く、快適に移動できる交通手段」になるように、あえてクルマには厳しい速度制限を設け、大きく遠回りしなければならないような都市設計を取り入れている例もあるそうです。この発想にはとても驚きました。
日本にも、富山市や京都市、栃木県小山市など、クルマ依存を脱し、公共交通を主軸とした街づくりを計画するなど、とても興味深い取り組みがいくつもあります。 (ちょっと刺激的なタイトルですが…)『クルマを捨ててこそ地方は甦る』や、『持続可能な交通まちづくり』といった本で詳しく紹介されていて、読んでいてワクワクしました。
日本で大きくクルマが普及し始めた高度経済成長期から半世紀以上。高齢化や地方の過疎化、そして気候変動が進み、日本の社会状況はクルマ普及期から一変しています。一方の自動車業界も、電動化や自動運転などの技術革新が起き、100年に1度の大変革を迎えているといいます。
だからこそ今が、「クルマ中心」の社会から思い切って舵を切ることができるタイミングだと思うのです。いわゆる地方創生、持続可能なまちづくりに本気で取り組むのであれば、移動の仕組みも合わせて変えていく必要があるのではないのでしょうか。
グリーンピース・ジャパンは、誰もが必要なときに安全・快適に移動ができる、環境・社会に適した仕組みの詳細について、より具体的なビジョン『持続可能なモビリティー推進における課題と提案:グリーンピースのビジョン』を発表しています。
こちらもぜひご覧になってみてくださいね。こちらのビジョンやメールの内容は、ご自由にシェアしていただいて大丈夫です。※写真や資料については、引用元やクレジットの記載をお願いします。
また、第3回目となるラジオも公開しました。「家族や友人に環境や社会の問題についてどう伝えたらいいか」というお話しや、ロゴに込めた想いについて語っています。こちらもよろしければぜひ。
今回も最後までお読みくださって、どうもありがとうございました! 様々なご意見があると思っておりますので、どうぞみなさまのご感想も下記のボタンからお寄せいただけたら嬉しいです。
グリーンピース・ジャパン プロジェクトマネジャー
高田久代
*1 バルセロナ市公式メディアBarcelona Metròpolis「Superar la vieja movilidad: el coche de anfitrión a invitado」
*2 Public Health Agency of Barcelona(バルセロナ公衆衛生庁)「RESULTS REPORT Salut als Carrers (Health in the streets)」2021年
[配信元] 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。 |
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